
今の時代にフィットする 『青木良太さんの器(和食器店 桃居)』
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今から3年前くらいになるだろうか。それは、滋賀にあるギャラリー「季の雲」でのこと。ちょうど明日から個展が開かれるというので、搬入に来ていた青木良太さんと一瞬、すれ違いはしたけれど、特に気にするでも、言葉を交わすでもなかった。それでも、彼が作った白いティーカップをひと目みて、その危ういくらいの繊細な曲線が、気になって仕方がなかったのを、今でもはっきりと覚えている。そして、ギャラリーの女主人から、彼が富山の出身だと聞かされて、「同郷のよしみ」という感情が多少なりとも働いたことを、私は決して否定しない。けれど、それを差し引いたとしても、それに余りある吸引力が、彼の器にはあったのだ。

それから3年後、青木さんの工房を訪ねた。工房は、茶人、古田織部で知られる岐阜県土岐市にある。工房を訪ねると、頭にはターバンを巻き、パールのネックレスにコム・デ・ギャルソンのパンツという出で立ちの青木さんが現れた。本当に申し訳ないけれど、おおよそ陶芸家には見えない。「大学時代は洋服やアクセサリーを作って売っていて、美容師になろうかとも思っていたんです。ちょうどカリスマ美容師が全盛の時代でしたから」。確かに、美容師というほうがしっくりとくる。でも、ひょんなことで通い始めた陶芸教室で、「自分の仕事はこれだ」と思い立つ。「轆轤を回しながら土を形にしていく、その手触り、作り心地が自分にとてもフィットしていたんです」と青木さん。

美しい顔もさることながら、青木さんの手はほっそりとしてとてもセクシー。その手から生み出される器は、独特のフォルムとシャープさの中に潜む危うさが魅力。光が透けて見えるくらい薄い白磁、鈍い光を放つ銀彩。どれもが神秘的なオーラを放っている。「安藤忠雄さんや内田繁さんの建築が好きで、そういう空間に合う、かっこいい器を作りたいと思ったんです」。青木さんが目指しているのは、その時代、時代にふさわしい器。その時代にフィットする器こそが、時を経てなお受け継がれ、生き残っていく。そう青木さんは信じている。「僕は日本を代表する陶芸家になりたい」。真っ直ぐな目をして青木さんは断言する。そして、「茶陶にも挑戦してみたい」と。その理由を尋ねると、「『へうげもの』っていう漫画、知ってますか?古田織部のことを描いているんですが、あれを読んだら、ますます茶陶に興味が湧いて」と青木さん。そこがなんとも現代っ子らしい。のびやかで衒いがなくて。さっそく私も「へうげもの」を買って読んでしまった。そんなふうに、心だけでなく体も動かされてしまう、そんな力が青木さんにはあるのだ。
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