三谷龍二さんのバターケース

器ギャラリー「桃居」での個展 『三谷龍二さんのバターケース』

三谷龍二さんの名前は知らなくても、おそらく三谷さんの器は目にしたことがあると思う。三谷さんは、今もっとも人気のある器作家のひとり。個展が開かれるとなれば、オープン前から若い女性が列をなし、オープンと同時に会場はあっという間に満員に。そして器が本当に飛ぶように売れていく。去る10月に東京・西麻布にある器ギャラリー「桃居」で開かれた個展の初日もまさにそんなふう。でも今回はさらに特別だったような気がする。なぜならテーマが「小さなバターケース」だったから。三谷さんのバターケースは20年以上も前から、変わらず作られている定番アイテムで、今ではなんと一年待ち。そんなレアアイテムの定番に加え、今回は小さいサイズの新作がお目見えするとあって、バターケース狙いのファンが殺到したかたちとなったのだ。

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じつは、このバターケースこそが、三谷さんにとっての器第一号、つまりは、器の原点。それを知ったとき、正直、私は不思議でならなかった。なぜバターケースなの? 器におけるバターケースの存在は相当ニッチなものなのに。そんな私の疑問に、三谷さんは静かに答えてくれた。「伊丹十三が『女たちよ!』というエッセイの中で、いいバター入れがないと嘆いていたんです。食卓を演出することがいかに食べもののおいしさを左右し、暮らしの豊かさにおいて重要であるかを語っていました。それがずっと頭の片隅にあったんでしょうね」。まだ木工の仕事を始めて間がない頃、友人でもある家具職人たちの仕事を見るうちに、自分も何か暮らしの必要に応える美しい道具を作りたい、とはっきり思うようになった三谷さん。その決意に回路のようなものがあるとするならば、それが、伊丹十三言うところのバターケースにヒュッとつながったのだ。

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「家具でも器でも、木の手入れはオイルをすりこみますよね。その点、バターは使うほどに適度な油分を木肌に与えてくれるので、木とはとても相性がいいんです」。三谷さんにとって木で何かを作るということは、そこに木でなければならない必然性が存在する。桃居のオーナー・広瀬一郎さんは三谷さんの器の魅力についてこんなふうに話してくれた。「器は主張しすぎてはいけないと思います。三谷さんの場合、木の素材性を生かして器に木の命を吹き込みながら、造形性に優れて実用的で美しい。作家の主張もしっかりとあるのに、それが押し付けがましくない。そのバランスがとてもいいんでしょうね」。木であることの必然性。そして生活の中の必然性。必然から生まれたものは、揺るぎない。だからこそ、三谷さんのバターケースは美しく、そしてみんなの心を捉えて放さない。

三谷龍二さんのバターケース

『三谷龍二さんのバターケース』

住所東京都港区西麻布2丁目25-13石原ビル
最寄り駅六本木駅
TEL03-3797-4494
営業時間11時〜19時
定休日月曜
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