
『今野安健』 光こぼれる白磁のカップ、気に入りめし茶碗。


大胆にぐっと削られた面取り、ピッピッとスピード感のある鏑(しのぎ)。わずかに青味を帯びた肌は日本の焼き物にしかない魅力を湛えていて、思わず手に取りたくなる。
山形県と新潟県の境、山深い里に窯を構える陶芸家今野安健(こんの・やすたけ)さんは、いま注目を集めている若手作陶家の一人。唐津の泰斗、中川自然坊氏のもとで3年間学び、灯油窯から本式の薪窯まで、瑞々しい感性と確かな技術でありとある器を手がけます。
「白磁」のカップ(2,600円)は灰釉にふくまれた微量の鉄分がうっすら青く発色して、健やかで、あたたかい。気取るでもなく、野暮ったくもなく、毎日気持ちよく使えて、飽きない器こそ「普段づかい」の王道ではないでしょうか。面取りは掌に納まって、肌もツルリと心地よく、いつまでも触っていたい調和感があります。ガラスコップのような姿をしていますが、面取りや鏑の魅力は、意匠だけではなく、土味に微妙な濃淡が生まれること。明るい所でかざすと、削られて土が薄くなった部分から日がこぼれたりして、なんとも楽しい。時々、光にかざしながら、麦茶を飲んでもよし、冷酒、焼酎のオンザロックもよし。これからの季節、暑い夏をすずやかにする「日々の用」に手放せないパートナーになりそうです。
さがしても、さがしても、なかなか満足のゆくものに出会えないのが、めし茶碗。今野さんの「焼締めし茶碗」(2,800円)はやや大ぶりながら、ツヤツヤの白米がきれいにひき映える優品。「半磁土」(はんじど)という、磁器の成分を多量にふくんだ白土を使用。磁器とも、陶器ともいえない不思議な面白さをもった器で、時にはビードロのようなガラス質があらわれ、時には欅形の火色があらわれる。自然の豊かな移ろいを、目で、手で愛でながら食べるのだから、これはもう、ご飯が進むはず。少し大ぶりな器形は、きゅうり、胡麻、大葉を摺った冷や汁飯なんか盛るのにいいですね。
東京、西荻窪の器店「魯山」店主・大嶌文彦さんは今野さんの器をこう語ります。「半磁土で器を挽く陶芸家はきわめて稀。今野の器づくりの魅力は、大胆さ、力強さかな。面取りや鏑もほんと素早く削ってあるし、感覚は迷わない。碗も、後でチマチマ削って修正するのではなくて、「挽きっ放し」の魅力がある。優れた古伊万里の良さにも通底しますね。今野の器は焼き物ほんらいの醍醐味を感じさせてくれます。」
何気なく食卓にのぼる器、だからこそ、心をこめて選び、本当に気に入りのものをつかっていきたい。
(取り扱い店・西荻窪「魯山」)
『今野安健』
| 住所 | 東京都杉並区西荻北3-45-8ペルソナーレ・西荻1F |
| 最寄り駅 | JR西荻窪駅 |
| TEL | 03-3399-5036 |
| 営業時間 | 11時〜19時 (取り扱い店・「<a href="/select/d0mt3h00000012a7.html">魯山</a>」) |
| 定休日 | 火曜日 |
| 地図>> | |
【Release】 06.07.28
【取材文】 石田瑞穂
【写真】 山下裕司(クラッカースタジオ)
