
『お茶とお菓子 横尾』 吉祥寺でカフェを開くということ。


ノブの上にひらがなで「ひく」と鉛筆で書かれた白いドアをあけると、そこには「カフェの居心地の良さ」をこれ以上ないくらい追求した空間がある。「antiques tamiser」の吉田昌太郎さんが作った店内には、一つ一つ選び抜かれた木や、学校で使っていたような懐かしい椅子で、18席ほどのカウンターとテーブルがしつらえてある。
華やかではないけれど、造り付けのカウンターと椅子、そこここに積まれた本や棚、モビールみたいに遊び心のある換気扇、梁の描く線がとてもきれいで、白と古い木材を基調とした空間は、まるで横尾さんの好きなモディリアーニの室内画のよう。
洗練と和やかさが見事に調和した空間に生命を吹きこむのは、オーナーの横尾光子さん。ご主人と、和食と日本酒のお店を同じ吉祥寺で営んでいるが、子供のころから喫茶店が大好きだった光子さんは、どうしてもカフェがやりたくなって、昨年、「お茶とお菓子 横尾」を開いた。「息子も娘も八年学校に通っていたし、庶民的なところと洗練された空気が同居している大好きな街」と吉祥寺を語る光子さん。「でもね、おいしいケーキ屋さんは多いけれど、おいしい和菓子とお茶をだしてくれるお店が、意外にないんです」。だからカフェを開きました、という軽やかさが、すごくいい。「ケーキより、和菓子」と主張する光子さんが目指すのは「女性ひとりで長々くつろげる」カフェ。「カフェは癒しの場所でないと」と、ふんわり、しかしはっきりと、光子さんは語られた。
さて、肝心要のお茶と和菓子はーこれまた泣かせる。お薦めは「煎茶」と小豆から炊いた酒粕入りの「おしるこ」。和菓子職人でもある息子さんのノウハウが活かされたおしるこは、甘すぎず、ほんのり酒粕の香る、まさに上品な大人の甘味。ちいさめで形よい白玉も雪のように淡くて、「お店の空気感を裏切りませんね」と、男性カメラマンも目を細めたのでした。ぴんと一貫したお店の美しさに琴線をくすぐられ、お茶と和菓子の深いなごみの世界にひたる。吉祥寺の理想のカフェがここにありました。
お店で日常的に使われているのは、光子さんが選び、大事に使いつづけているアンティーク。
内装はantiques tamiser店主・吉田昌太郎さんがプロデュースしている。公民館や学校など「むかしの集会場」をイメージしたそう。
おしること煎茶、セットで900円。ほかにゴルゴンゾーラ・チーズの焼き豆餅(飲み物とのセット・900円)、めずらしい無農薬のスウェーデン紅茶(各種600円)なども。
自然光がいっぱいに入る店内。一人席が多いのは、お客さんが心おきなくぼんやり、ゆっくり過ごせるように。この席でイラストを書くお客さんもいるとか。
今では手に入りにくい、詩人・瀧口修造が監修した名著「紀伊国屋アートギャラリー」もあった。センスのよさがこんな細部にも宿っている。
モディリアーニは光子さんの好きな画家。店内の随所にそのモティーフがちりばめられている。
『お茶とお菓子 横尾』
| 住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-18-7 |
| 最寄り駅 | JR 中央線 / 総武線 ・ 京王井の頭線 吉祥寺駅 北口より徒歩5分 |
| TEL | 0422-20-4034 |
| 営業時間 | 12:00〜20:00 (L.O. 19:30) |
| 定休日 | 火曜・第3月曜 |
| 地図>> サイトを見る>> | |
【Release】 06.05.10
【取材文】 石田瑞穂
【写真】 松川智一(クラッカースタジオ)
