伊勢参詣と海老

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 海老といえば伊勢海老を思い浮べる人が多いでしょう。しかし伊勢の産物ではありません。志摩で捕れたのを伊勢商人が京都へ出荷したのでそう呼ばれました。ですので志摩から直接、尾張へ出荷したものは志摩海老です。それがやがて鎌倉名産の鎌倉海老も、「鎌倉でとれた伊勢海老」と認識されるようになります。「伊勢海老」という呼称の初見は江戸時代初期ですので、その頃に伊勢海老というブランドが生まれ、それが全国的な商品名として定着し、志摩・鎌倉といった地方ブランドを飲みこんでゆくといった構図のようです。  この背景として伊勢そのもののブランド力を考える必要があるでしょう。江戸時代には寺社参詣が上下を問わず最大の娯楽でして、なかでも伊勢参りはその頂点です。普段は閉鎖された村落社会で生活している人々が、洗練された都市文化に触れ、宿々での数々の名物・名産と出合いつつ、日本随一の神社たる伊勢神宮にたどり着く。そこで食べた伊勢海老の美味しさは、参詣の思いでの一つとして、語り広められていったのでしょう。

【挿絵解説】伊勢海老に橙(国立歴史民俗博物館 錦絵コレクション) 海老の名前は、その体色が蒲萄(えび)色であったからとされます。蒲萄とはブドウの古い表記で、つまり熟したブドウの色です。曲った腰と長い髭状の触覚が老人のようなので海老=海の翁(老人)という美名が充てられました。長寿の象徴として、正月飾りの鏡餅や熊手などによく用いられます。

【参考文献】・酒向昇『海老』法政大学出版局、1985年 ・本多隆成『街道の日本史30東海道と伊勢湾』吉川弘文館、2004年

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