昼飯にうどん・蕎麦は定番ですが、ホテルのバイキングや旅館ならともかく、自宅の朝食にうどんや素麺が出てきたら、一瞬あれ?と思いますよね。よっぽどの麺好きか、沢山もらったからとか特別な理由がなければ、普段の朝食には似合わないのが、うどん・蕎麦・素麺類の特徴といえましょう。 では何故、うどん類は朝食に似合わないのか。それは本来、うどん類が精進料理の点心の素材であったからでしょう。ここでいう点心とは間食、つまりおやつのことです。古来、日本では朝・夕の二食が原則であり、いわゆる「昼食」を加えた一日三食が普及するのは江戸時代からになります。この昼食の一般化にあたり、もとより間食の食材であったうどん類が昼食のメニューに採用されることは自然な流れといえます。逆に、間食の食材という素性を引きずったため、日常の朝食・夕食にはなじまなかったのでしょう。 うどんに素性があるように、食材にはそれぞれ固有の歴史があり、普段、意識することはありませんが、それらは私たちの食習慣を規制・誘導しているともいえましょう。
【挿絵解説】京都四条河原うどん屋風景(還魂紙料『日本随筆大成6』吉川弘文館、1927年より) この図は延宝・天和頃の古画だそうですから、17世紀後期、江戸時代前期になります。四条河原の料理屋には「けんどん・うどん」と注記があります。「けんどん」とは慳貪蕎麦切ですので、現在のようにうどん・そばが同じ店で扱われているようです。
【参考文献】・酒井伸雄『日本人のひるめし』中公新書、2001年 ・岡玲子「中世・近世の麺食について」『福岡女学院大学紀要人間関係学部編』8、2007年 ・熊倉功夫『日本料理の歴史』吉川弘文館、2007年