「花は桜」というように日本で花見といえば桜ですが、中国で花見といえば桃です。それとも関係するのでしょうが、かつて桃の花・実・枝は霊的な力を持つものと認識されていました。身近な例ですと、西遊記で孫悟空が天界の桃を食べて長寿を得たというのがありますね。 もちろん、桃太郎のお話しもこうした桃の霊的な力に関係しています。洗濯をしていたお婆さんが、川で大きな桃を拾うことから始まる桃太郎物語ですが、実は様々なパターンがあります。その一つが、桃太郎は桃から生まれるのではなく、桃を食べて若返った老夫婦から生まれた子供だ、という設定です。桃から生まれたという設定では、桃を巨大化するか、赤子を縮小するかの何れかで説明しなければならず、非現実的です。もちろん桃を食べて若返るという話しも現実的ではないのですが、いわゆる高齢出産と考えれば納得がゆくでしょう。子供のなかった老夫婦に子供ができた、という明るい話題で聞き手をひきつける、そのアイテムとして桃が使われたということでしょう。
【挿絵解説】悟空桃園に七仙女に逢う図(『絵本西遊記』有朋堂、1913年) 西遊記で孫悟空は、天界の桃園の番人になりますが、仙果である桃を食べ、そのおかげでべらぼうな長寿を得ます。
【参考文献】・柳田國男「桃太郎の誕生」『柳田國男全集6』筑摩書房、1998年、初出32年 ・野村純一『新・桃太郎の誕生』吉川弘文館、2000年