久礼の大正町市場

港の景色鰹、鯖、鯨……! 山川里の幸がいっぱいの高知は、海の幸にも恵まれています。そして、港町・久礼の大正町市場は高知ならではの旬の魚介類がずらりとそろう、魚好きにはたまらない市です。

ここ何回は高知に行くたびにこの市に足を運んでいますが、最初に訪れたきっかけは旅程の“時間不足”でした。太平洋に面した高知の海岸は総延長700㎞あまり。大小90弱の漁港が点在しています。ある朝、西の土佐清水市の大きな漁港・清水港あたりに獲れたてのおいしい魚を食べに行きたいと思いたったのですが、時間がない。夕方には高知市内に帰ってこないと帰りの飛行機に間に合いません。どうしようかと悩んでいたときに薦められたのが、漫画『土佐の一本釣り』の舞台・中土佐町の久礼でした。港町・久礼には、一般の人たちが買い物できる市場があり、鮮度のいい魚をその場で食べることもできるというのです。高知からだとJRの特急で1時間弱で行けるのですが、レンタカーで向かうことに。高知自動車道を須崎で降りて約20分、看板に導かれて迷うこともなく、久礼の大正町市場に到着しました。

市場の様子大正町市場が始まったのは、明治時代の半ば頃。近隣の漁師のおかみさんたちが、夫や息子、家族が獲ってきた魚を売るようになったことからスタートしたそうです。そのスタイルは今も同じ。木造でレトロな雰囲気のアーケードには大小の鮮魚店を中心にさまざまな店が集まり、路地にもおばちゃんたちの露店が並びます。

おばちゃんたちの露店初めに訪れたとき、到着したのは午後11時頃。アーケードの中はあまり人気がなく、もしやお休み?と不安になったのですが、なんのことはない、市場自体始まるのがお昼過ぎだったのです。市場から海へは歩いてすぐ。海岸の防波堤の上に座ってしばらく太平洋を眺めてから市場へ戻ると、先ほどとはがらりと違ったにぎわいがありました。鮮魚店には高知の看板魚・鰹はもちろん、鯨、ウツボ、ガシラ、キビナゴなどなど正真正銘朝どれのぴちぴちした魚介類が並び、店先や露店では魚介類や海草を使ったお惣菜や自家製の干物が道行く人を呼んでいます。お客さんは高知市内など近隣から来た家族連れや友人同士などが多いようで、楽しげな会話が飛び交う中、次々と魚たちが売れていきます。

鰹のたたきそして、買い物以外にもう一つのお楽しみが。市場の中の食堂では、市場内で買ったものを持ち込んで食べることができるのです。セルフサービスで干物を焼けるように店頭には炭火が熾っていたりします。また、鮮魚店の中には空いているスペースにテーブルを設けて持ち込んだものをそこで食べさせてくれる店も。藁焼きしたばかりの鰹のたたきやウツボ(!)のたたき、おばちゃんが目の前でさばいてくれた鯵、ひじきや太刀魚の天ぷら、名物のかつおめし、丸々と太った鯖の姿寿司……。潮の香りが漂い、漁師のおかみさんたちの土佐弁が行き交う中、食べるごはんは格別のおいしさ。高知市内で食べる魚料理とはまた違う味わいなんです。

くれ天さて。きらきらと輝く新鮮な魚を目にすると、東京に持って帰って我が家の食卓で!などと思ってしまうのですが、発泡スチロールに氷を詰めて……などなどと考えるとちょっと難しい(鰹のたたきなど、発泡スチロールに詰めて地方発送してくれるお店もあります)。そこでお薦めするお土産が“くれ天”です。土佐沖で獲れた小魚を骨ごとすり身にして菜種油で揚げたくれ天は昔から久礼の家庭で愛されてきたもの。大正市場の中でも販売していますが、すぐ近くの八幡通りには専門店もあり、揚げたてのくれ天を1枚から売っています。ぺらんと薄いくれ天はおやつにもおかずにもぴったり。あっさりして素朴な味わいでついもう1枚と手が出てしまうおいしさです。

かつおようじほかにも、久礼オリジナルの“かつおめしのもと”や地酒、手づくりの土地のお菓子など持ち帰りたくなるものがたくさん。高知の魚をお腹いっぱい堪能したら、あなたなりのお土産を見つけてみてください。そうそう、近くには太平洋が一望できる露天風呂(日帰り入浴可)やイチゴのお菓子がおいしいカフェなども。港町・久礼に行けばきっと“おいしい”、“楽しい”、“気持ちいい”が詰まった小さな旅が楽しめます。


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