港の味、白身魚のフライ
これぞ台湾屋台の源流、とでもいうべき料理がこの白身魚のフライ。アツアツの鱈のフライとポテトを新聞紙にくるみ、ビネガーをパッパとふっていただく、英国市民の安くて貴重なタンパク源となるのがフィッシュ・アンド・チップスならば、台湾の屋台で有象無象、たてつづけに揚げられる白身魚のフライも似たようなもの。とくに鱈は安くておいしい庶民のタンパク源であり、おやつ、夜食なのです。
台湾にはもともと日本でいうスーパーマーケットのようなものがありません。魚も、いわゆる「パック売り」の発砲スチロールに入った切り身を買うことなどほとんどなく、基隆(キルン)のような港町では、魚は必ずといっていいほどその日に揚がった新鮮なやつを一尾買い。あるいは量り買いします。
すると、どうしても、大量に買った魚が余ってしまう。そこで、安い白身魚はその日の内に下ろし、下味をつけて保存しておきます。いったん下味のついた魚は冷蔵庫で2日ほど保ちますが、その用途は驚くほど多彩。焼き魚、フライ、スープ、はては漬け物にまで使います。「どんなに多く魚を買っても、あまさず使う」のが、台湾の厨房流儀、とハルさん。「下味がついた魚があれば、夜遅く帰ってきたり、時間がなくてもかんたんにすぐ調理できるから、便利」とおすすめ。
今回は、台湾屋台料理のベースのなかのベース、鱈のフライをご紹介。ふつうの魚フライと大きくちがうのは、このフライ、陸に上がった河豚みたく「ふくらんでいる」こと。ぺったりしてしまった魚のフライはどこか貧相ですが、このフライはある工夫によってぜんぜん揚げ物のしつこさがなく、なかは淡白でふわふわでサクサク、ちょっと高級魚のような味と旨さにかわるのです。
まずは普通に小麦粉、卵、塩、かくし味に砂糖を少々。
卵を入れたら、ここからポイント。水の代わりにグラス1/3~適量のビールを注ぎながら混ぜ合わせます。今回は香りをつけるために、粉末状にした台湾の高級烏龍茶葉を使用。衣はあまりさらさらにせず、すこし粘りがあったほうがいい。
塩、ごま油、こしょうで下味をつけた鱈の切り身にさっと衣をつける。
さあ揚げますよ。強火でよく油を熱し、温度を高めてから、やや火を落とし気味にして揚げる。衣を焦さずに、なかにじっくり火を通すため。
家庭のコンロで火加減が難しい場合は、適宜、ご調節を。
じゅわじゅわ泡立つ油のなかで、鱈が「泳ぐように」お玉でかき混ぜながら揚げていく。
黄がかった衣が黄金色にかわる瞬間を狙って、すぐ油を切る。このタイミングが、揚げ物の成否を決めるのだそう。衣を焦さずサックリに、なかによく火が通った状態。「このタイミングがつかめたら、もうプロよ」
レタスを敷いて、そのうえにアツアツの鱈のフライをのせ・・
はい、できあがり!カメラマンさんも「ものすごく手早かったです・・」と絶句。
ほら、衣がぷっくり膨らんでいるでしょう?この膨らみを可能にしているのが、最初に小麦粉に混ぜたビールだったのです。衣が鱈をぺったり締めないので、なかの白身魚は花が咲いたように、ふうわりやわらかいのでした。ややグリーンなのは茶の色。こおばしくて、衣によく合います。
フライに合うのはビール!おっと、それだけではありません。鱈のフライとハルさん秘伝の野菜スープとの相性はもう絶妙でした。茶の馥郁たる薫りと衣の油がじんわり、野菜ベースのスープに溶けてやさしく舌に沁みわたります。このスープ、「台湾屋台ハル」ではすべての麺類スープのベースになっていて、鶏ガラ、調味料などは一切つかわずに、野菜の滋味だけでできているのです。「スープは味をつけるためにあるのではなく、味をひきだすもの」とは、ハルさんの箴言。お店でしか味わえません。
次回は台湾鱈料理の味part2。ご期待ください!
【06.09.25】


