なす
子供の頃、なすの天ぷらが大嫌いだった。あの中途半端な食感を、気持ちが悪いと思っていた。それでも母は、なすを揚げては、ああおいしいおいしい、と笑い、家族の皆も、いかにもおいしそうに箸を進めるものだから、なんだかそれがくやしくて、私も渋々口に入れた。忘れもしない、小学6年のある日、そのおいしいがとつぜん理解できるようになった。私はなすの全部が好きになった。
大人になって、好きななすを、今度は食べたくとも食べられなくなった。ひどい冷え性になり、夏でもキュウリやなすを全然体が受け付けなくなったのだ。嫌いではないけど、少しだけ、しかも極力体を冷やさない調理法で、が、私となすとの、距離をおいたおつきあいになった。それが今年に入って、急に体質の変化が起きた。冷え性がすっかり治り、これまで食べられなかった夏野菜を、いやというほど食べられるようになったのだ。あちこちから届くなすを、ごま和えに焼きなすに、柴漬けにぬか漬けに、揚げ浸しにフライに、とさんざん食べて、もうおなかいっぱいだと思ったら、こんどはおいしい秋なすの時期。山口に住む友人から、またどっさりと届いた。
実は先週作ったオイルサーディンを、ちょうどお昼に食べきった。残ったおいしい油を捨てるのはもったいないなあ、何に使おうかなあと思っていた矢先。そうだ、そのままなすにかけて焼いてしまえ。まず縦半分に切ったら切れ目を入れて、しばし塩水につける。さっと洗い水気を拭き取ったなら、耐熱の容器に並べ、上からオイルサーディンの残りオイルをかける(ニンニクやタマネギも一緒に)。アルミホイルで覆って、オーブンに入れ、170度で30分。写真は、待ちきれずにそれを出したところ。きれいだけれどまだ早い。本当はあと20分ほど焼いて、くたくたっとさせれば出来あがりである。
ああいい香りだなあ。気分は地中海だ。そういえば友人の段ボールの中には、元気なミントもたくさん入っていた。今晩は、これにミントを散らし、レモンでもしぼって、白ワインを飲むつもり。子供の頃の食卓なんて思い出しながら。
07.09.13
【文】濱田美里





