青いすだちに
齢90歳の義父が旅立ちました。その日も新聞に目を通し、孫と言葉を交わし、主治医には特別の笑顔を見せました。彼は私の母と再婚後、この地を終の棲家に選びました。秘やかに密やかに、見送りました。花々の香りと香が室内に漂い、それは静かでした。
このひと皿は、手一杯、心一杯の私に代わってスタッフの理恵さんが作ってくれました。彼女の故郷の敬愛するシェフの「まかない」レシピ、アリオ・エ・オリオ・エ・ペペロンチーノにすだちを加えました。そのシェフは一昨年、天に召されました。すだちは、ギタリストの南さんが家族旅行の途中に届けて下さったものです。彼とのご縁は、私の若い頃に仕事で知り合ったギタリストに繋がります。夜毎の演奏に胸が震え、優しくて破滅的なその人に惹かれました。その人も、もういません。
蝉時雨の中、人生の中で出会った、もうこの世では会うことのない人たちを想います。巡りあい、別れ、生まれ、生命の川は滔々と流れます。身軽に身綺麗に流れてゆきたいと願う。青いすだちの種はまだ柔らかく、ほろ苦く美味でした。
《青いすだちを搾ったペペロンチーノ》
〈材料〉
・パスタ 160g
・赤唐辛子 1本半
・ニンニク 2片
・オリーブオイル 50~100ml
・すだち 1個
・塩、こしょう
〈作り方〉
(1)赤唐辛子の種をとり、薄切りにする。
(2)ニンニクを薄く切る。
(3)小鍋にオリーブオイルを入れ、極弱火でじっくりとニンニクを揚げる。色づいたら取り出し、ペーパーの上で油を切る。
(4)(3)の小鍋、熱をとり、赤唐辛子を入れる。
(5)パスタを茹でる。茹で上がったパスタに(4)のオリーブオイルを好みの量でまわしかける。塩こしょうで味を調える。
(6)パスタを皿にのせ、揚げたニンニクをパラパラかけて、すだちを搾る。
07.08.23
【文】萩尾エリ子 【写真】原田留里





